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代謝率と消化吸収効率 2

 
 餌の質のことに少し。
 ふたつの要素があります。カロリーと、必要な栄養素と。
 代謝を上げようという時、餌の量は確保したいのです。胃腸が動いているほうがいいのですから。ちなみに、諏訪流で、最初に足革などつけるために保定する時に「ふくみ餌(少量の強制給餌)」を与えたり、架据え初期からなるべく水を飲ませるのも、胃腸を動かして代謝を速く上げようという意味を持ちます。
 メンタルを考えても、一定以上の満腹感は必要です。と、嵩ばる割にはカロリーが低い餌、がいいということになります。生き餌ではなく、血抜きした肉、洗った肉、それもハトではなくヒヨコやアナウサギ(飼いウサギ)、ニワトリなど。
 ところが、こうした肉は必要な栄養も乏しくなります。体調不良はむろんいけませんが、そこまでいかずとも、本調子でないと、上がるはずの代謝も上がらなくなります。
 かといって、新鮮なハトを多給していてはオーバーカロリーになります。
 組み合わせるわけです。低カロリーの餌を基本に、少量の高品質な餌を毎日少し、あるいは時々、与えます。ビタホークなどの栄養剤も、特にこの時点では大きな価値があります。

 餌の量。
 前記の諸要素だけで決ってくるかというと、そうはいきません。
 消化効率が関係します。カロリーの出入りは、「体の中に入る、出る」です。この場合、「体の中」には「消化管内」は含まれません。食べても素通りすればカロリーを摂取したことにならないわけです。
 動物園で、データのない動物の人工哺乳をする時、まずは経験とカンでやや多めに授乳量を決めて、あるいは、飲みたいだけ飲ませて、何日分かのデータを取ります。
 少し授乳量を減らしてきます。体重増加がその前までの何日分かの変化の延長線上にあるかを見ます(厳密には直線的増加ではないので、そのあたりは勘案して、ですが)。
 延長線上より低くなる(成長不良となる)ところまで徐々に減らしていく(ミルクの絶対量ではなく、体重比を)わけです。
 少ないほうから考えると

 不足→適量→過量→下痢

 であり、適量と過量では「成長率は同じ」なのです。量が違うのになぜ体重の増加が違うかといえば、消化効率が違うから、です。細かくみるなら、100カロリーが与えられた時に効率が70パーセントだとすると、獲得するのは

 70カロリー引くことの消化吸収と余分排泄のために使うカロリー

 150カロリーの時、効率50パーセントだとすると、獲得するのは

 75カロリー引くことの消化吸収と余分排泄のために使うカロリー

 となります。200も300も与えられて、消化吸収や余分排泄の処理が追い付かなくなると下痢をする、と。
 望ましいのは、成長不良になるかならないかプラス少しの余裕、となります。おおざっぱには飲みたいだけ飲むのの8、9割ぐらいかな。
 
 猛禽の場合、

 脂肪が多く餌がたっぷりの時には、代謝は低、効率も低。

 脂肪が多く餌が少なくなると、代謝は低、効率も高。脂肪という蓄えがあるからという以上に、体重は減りにくくなります。

 脂肪が少なく筋肉も少なく餌が少なく代謝が低い時には効率は高。詰めで体重が底を打つあたりです。運動させたくても、ちょっと食べさせるとすぐに体重が上がって困る、わけです。そういう意味でも予め代謝をあげておくのが大切で・・・。

 脂肪が少なく筋肉そこそこで餌が少なく代謝が高い時には効率は高。ただし、代謝が高いので、前段階よりはラクになってきます。

 脂肪が少なく筋肉しっかりで餌が多く代謝が高い時には効率は揺れ動きます。
 これが目標地点です。

 筋肉が多ければ同じ代謝率でも消費カロリーが増えるってこともありますけれど、それ以上に重要なのは、消化吸収効率が変化すること、なのです。
 少し多めに餌をやってしまっても、翌日の体重は変化しません。
 あるいは、実演時なんかすごいことになります。普段50グラムが日々の給餌量の個体に100グラム以上与えても体重変化ナシだったり。緊張や興奮で消化吸収効率がガタ落ちになるわけです。当然ながら実演に慣れてくると、70グラムで変化ナシ、というように変ってきますが。
 それはさておき、日々の管理においても、消化吸収効率の変動はおおいに助けになります。餌が目分量でOK、運動量や寒さなどあまり細かく気にしなくても、体重は変らず、となります。持ち餌の許容範囲が広くなります。
 ただ、そこから減らそうとすると少し抵抗が出て来ます。餌を減らすと消化吸収効率があがりますから、そこで安定させてから再び餌の調整をやり直すことになります。気をつけないと、代謝まで下がってしまって(胃腸がさぼりますから)、ドツボにはまります。
 体重を上げる時にもこのズレが効きます。餌を増やすとまず消化吸収効率が下がるので、当初は変化が出ません。そこでさらに餌を増やすと、増えた餌に対応して高まった消化吸収効率で「さらに増えた餌」を処理するので、意図したより激しく体重が増えてしまったりするわけです。

 ここまでお読みいただければご理解いただけたでしょうが、これらの各要素を科学的に数値で把握するのは、いまの日本で普通に訓練する場合には不可能です。原理的にはできなくはありません。GPSやGメーターを背負わせて、連続記録可能な深部体温計や血糖値測定装置を体内に埋め込んで、カロリーの判っているミンチ状の肉かなんかだけ使って、あれこれとこねくれば・・・。現実的には無理ですね。
 となると、「補助輪なしの自転車に乗る感覚」「水泳の息継ぎの感覚」のようなかたちで、代謝だけでなく、消化吸収効率も感覚的に把握する他ありません。これを身につけるためには、それだけでは万全とはいえない餌の量や運動量などの記録は大いに意味があります。記録をつけるべきであります。
 さらには、目分量で何グラムと踏んだウズラの下半身(個体差ありますから)が、あるいは羽節が、本当は何クグラムなのか検証したりも有意義です。羽をむしった羽節を鳥に齧らせて、骨は残らず回収して差し引きすれば、このぐらいの見掛けの羽節は実は何グラムか・・・が判ります。
 あるいは同じ何グラムでも、脂肪や脳(脂です)と筋肉では意味が異なります。生き餌をわしわしと食べている時、ちらりと見ておいて、さらに、生前と食べられた後との重さを比較して、だいたいどのぐらいの脂肪と筋肉と血液を鳥が口にしたのかを推測する練習も有効です。
 さらに、Dr.N.Foxが書いているように、素嚢の大きさを空から満タンまで10等分なりして、それぞれの段階の内容量を推測する練習も。まあ10等分するのは方便で、素嚢の膨らみを見た時に、パッと何グラム喰ったな、と判ればよいのです。食前食後で体重をはかり比べれば練習できます。
 それらの推測が正確になることによって、もう一口二口食べさせるべきかどうかの判断の正確さが増せば、訓練全体がスムーズに進むようになります。

 代謝を下げる時のことも少し述べておきます。
 イヌワシ、ハヤブサなど、パワーで大空を舞うタイプでは特に、急速な代謝の低下はバンブルフット(趾瘤症)を引き起こしやすくします。
 病理学的にはいろいろあるんでしょうが、とりあえずは、筋肉なんかと、消化器系や腎臓・肝臓との間に、「運動を中止したあとどのぐらいのペースで回転が遅くなっていくか」に差があるために、筋肉で作られる老廃物が溜まってしまって、もともと代謝のよくない足先に特に濃くなっちゃって炎症を起こし、感染しやすくなる・・・ぐらいに考えておきます。
 この現象、救護された個体でバンブルが多発するのにも噛んでいそうな気がしていますが・・・。
 救護猛禽では無理ですが、私有している鳥なら、飛ばすのをやめた後も軽いジャンプアップをしばらく継続して徐々に代謝を落とすとか、水浴びを普段以上にさせるとか、予防的に軟膏・クリーム類を塗布するとか、といった対策を取るのが無難です。
 予防的に使う外用剤としては、ヒルドイド(ただし外傷がある時はしみるので避ける)、尿素やビタミンA、Eが配合されたものなどが考えられます。どのぐらい効くか確かなデータは持っていませんけれど、これらなら大きな副作用はなさそうですから、ダメもとでやってみる価値はありましょう(これらは市販薬ではありますが、私は獣医師ではないので、情報は自己責任でご利用ください。また、バンブルが出ているのなら、きちんとした獣医師の診察のもと治療されることをお勧めします)。

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copyright Ikuya Hatano 2002
放鷹道楽/
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